· 

法定調書を作りながら考えたこと~給与所得者と企業から見た社会保険料についてのあれこれ

所得税の社会保険料控除について、まず、社会保険料そのものを考えてみた。社会保険と一口に言うけれど、厚生年金と健康保険の2つで構成されている。

社会保険料は、ある意味すごく分かりやすい。なにしろ、家族とかその他の費用とか全く関係なく、とにかくもらった金額で決める。独身者であろうが、扶養家族がやたらに多い大家族であろうが、とにかく給与報酬、さらに交通費などの手当を含めて、とにかく払われた金額で決められるのだ。だから、同じ基本給でも、残業が多かったり、通勤手当(通勤交通費)が多いと、余計に払うということも起きる。

計算方法は、総支給額そのものではなく、2万円ごとに段階を区切り、その中心値の金額に対して保険料率をかけて計算する。4月から6月の総支給額の平均値からどの段階に入るかを定めて、その計算で9月から翌年8月までの保険料を決めて、途中変更があった場合でも段階が1段だけ変わるならそのままの保険法を適用する。なので、昨年10月の消費税増税で支給される通勤手当が増えて段階が1段変わっている人は、今年9月から社会保険料も増えることになる。

保険料率は、健康保険で介護保険の被保険者でない40才未満で9.91%、介護保険料が加わる40歳以上は11,64%、厚生年金は18.3%で、これを本人と雇用者である会社で折半して払う。これは、ある意味当然と言えるのは、税金と違って、戻る可能性のある「保険」であって、その他の際に支払われる金額が保険料と連動する部分があるからである。厚生年金の場合、老齢厚生年金の支給が前提で、さらに遺族厚生年金、突然の病気や障害で働けなくなった場合の障害厚生年金まで含めてカバーしているので、相応の負担というのは仕方ない。

参考に厚生年金保険料率の推移を。

健康保険は、原則3割負担で、高額療養費は所得によって若干差がつくけれど、保険料を多く納めて同じ条件だと不公平な気もしなくはないが、最大1年6ヶ月の傷病手当の支給額が保険料によって変わるから、仕方ないと言えなくもない。

当然、扶養家族の医療費に対しても3割負担だから、家族の多い人は同じ保険料で大勢の家族がカバーできることになるし、所得が多い人から少ない人への再分配という機能もあるので、まあ、納得というところはある。

これも参考に健康保険と介護保険の保険料率の推移を。

ただ、納得できないのは、保険料に上限があるということ。つまり、所得がある程度多いところまで(健康保険は月135万5千円、厚生年金は月60万5千円)は比例して保険料を増やしていくのに、そこから上は一定金額になるということ。これ、趣旨からいうと、不公平感あると思うのだが。

 

ついでに、介護保険料の計算がまた複雑である。健康保険加入者は加算されて天引きだが、国民健康保険の場合は自治体で異なるので後から納付書が届く。さらに65歳以上の場合、所得段階に応じて計算が変わる。これがまた「ええっ? なんで?」という話があって、本人だけでなく世帯年収も判定基準になるのだ。しかも、基準金額すらも自治体によって変わるのだから、もうそれぞれの役所の説明を見ないと計算できない。

大雑把に説明すると本人が市民税非課税で、課税年金収入と合計所得金額の合算額が80万円以下かつ同一世帯全員が市民税非課税だと19,500円(八王子市)や24,356円(港区)なのだが、同一世帯に普通に働いていて市民税課税されている人がいると、それで58,400円(八王子市)59,952円(港区)と跳ね上がる。もちろん、働いて課税されている人は本人も介護保険料を払っている訳だから、ある意味二重取りされる訳で、これが嫌なら同居していても住民票上で市民税が課税されている家族を「世帯分離」して別世帯にすれば19,500円で済むことになり、実態は変わらなくても書類1枚でこんなに変わってしまうのである。

 

それと、雇用と社会保険料の関係を分かりにくくしているのが、「労使折半」である。これは、企業側の立場から言わせてもらうと、労働者の給与から引かれている保険料と同額を企業も払っていることが、給与明細から分かりづらい。企業側から言えば、人件費の一部であるから本当は総支給額のところに企業負担分の金額を加算したいくらいである(そうすると、所得税が増えるという問題がえるから、そうしない仕組みになっているのだが)。だから、社会保険の適用のない従業員をいわゆる正社員待遇の社会保険加入にすると、額面の給与以上に人件費が増えるのだ。おいそれと正社員にできないのは、企業側のそういう負担もあるからで、そこはもう少し議論されてもいいと思う。ついでに、社会保険料については企業側はさらに負担があって、納付される社会保険料に応じて「子育て支援金」まで払うことになっているのだ。

 

今回は、給与所得者ということで触れられなかったので、そのうち気が向いたら、国民年金や国民健康保険まで含めて、改めて調べてみたいと思う。

次回でこのシリーズ最後、住民税について考えてみたこと。