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賀茂の臨時祭

昨日は、新暦では大晦日になりましたが、旧暦では11月25日、11月の下の酉の日で、明治3年(1870年)に廃止されるまでは、賀茂の臨時祭が行われていました。臨時祭とはいえ、始まったのは寛平元年(889年)で、4月の中の酉の日に行われる例大祭に対して、臨時祭と呼ばれるもので、途中応仁の乱で中断し、江戸時代後期に再び行われるようになっていたものです。


なほ世にめでたきもの 臨時の祭の御前ばかりの事は、何事にかあらん。


と『枕草子』にありますが、


賀茂の臨時の祭は、還立の御神樂などにこそなぐさめらるれ。
庭燎の烟の細うのぼりたるに、神樂の笛のおもしろうわななき、ほそう吹きすましたるに、歌の聲もいとあはれに、いみじくおもしろく、寒くさえ氷りて、うちたるきぬもいとつめたう、扇もたる手のひゆるもおぼえず。
橋の板を踏みならしつつ、聲合せて舞ふ程もいとをかしきに、水の流るる音、笛の聲などの合ひたるは、實に神も嬉しとおぼしめすらんかし。


盛大な様子が伝わってはきますが、やはり、寒かったのは確かですね。

寒く凍るほどの空気に、着ているものさえもとても冷たく、扇を持つ手も冷たくなっている(けれど、それを忘れさせてしまうほどの素晴らしさ)。平安時代は、現代と同じく気候は温暖だった時期ですが、それでも、寒い時期はお祭りも少なくて神様もお喜びになるだろうけど、参加者も見物客も寒かったでしょうね。