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渡辺麻友引退

新型コロナウィルスで東京はとんでもない状況になっていて、うちも休業中で、ブログの原稿も下手な内容は書けないのをいいことに、ブログを止めていたのですが、これは書かざるを得なくて。

 

渡辺麻友芸能界引退。しかも引き際もまさに「正統派アイドル」にふさわしい潔い幕引きであった。

AKB48で神7と称され、総選挙でも常に上位にいた彼女であったが、女王は1回のみ、そこには「正統派アイドル」ゆえの限界があった。

 

前田敦子卒業までのAKB48は「普通の女の子がトップアイドルになるサクセスストーリー」がテーマであり、ヒロイン前田敦子が、すでに完成された「王道アイドル」である大島優子に一度敗れ、その後にリベンジすることで完結した。そして、暫定女王の「王道アイドル」大島優子から「正統派アイドル」渡辺麻友へとバトンが渡されるはずだったのだが…。

実際、『ギンガムチェック』では、3位以外とは明らかに異なる厚待遇でMVが作られた。

彼女にとってというより、制作陣にとって誤算だったのは『UZA』でセンターを取れなかったことであろう。おそらく、ダンスのクオリティに問題があり、踊れる大島優子と、こちらもSKEでダンスには定評のある松井珠理奈にセンターを譲らざるを得なかったことは。

とはいえ、ある意味仕方がない。「正統派アイドル」には、そこまでの踊れる能力は本来要求されないのだから。ただし、そういう状況で彼女が『正統派アイドル』としてセンターに立つ楽曲について、制作陣が冒険しづらくなり、どうしても無難な仕上がりになってしまうのは否めない。

 

結局、AKB48における彼女の代表曲(前田敦子なら『フライングゲット』、大島優子なら『ヘビーローテーション』、指原なら当然『恋するフォーチュンクッキー』、じゃんけん女王の麻里子様も『上からマリコ』がある)と言えるものがないままになってしまった。もちろん『心のプラカード』という、ご褒美曲はそれなりにキャッチーに作られて、ある程度は認知されたけれど、前年の指原莉乃センター『恋するフォーチュンクッキー』と二番煎じ感は否めない。後ろに大島優子と渡辺麻友を従えた指原莉乃が「周りを見れば大勢の可愛いこたちがいるんだもん」と歌うからこその説得力であって、渡辺麻友センターではヒロインの片想いの『恋するフォーチュンクッキー』が成り立たない以上、仕方なかったのかもしれない。

しかし、この二番煎じはやはり、その後の彼女の「イマイチ感」へ悪影響を与えた。せめて、女王としてどセンターで派手に踊りまくる『ハロウィンナイト』や『ハイテンション』であったなら、また違った展開になったであろう。それこそ『心のプラカード』はご褒美にカップリングでも良かった。

 

たらればの話になるが、本来の彼女の魅力を引き出すための3つの可能性があったと考える。

 

① 『ポニーテールとシュシュ』クラスの神曲に当たる。

『ポニーテールとシュシュ』を渡辺麻友メインでMVを作れば、これ以上の正統派アイドルソングはない仕上がりになる。だから、このクラスの神曲が降ってくれば良かったのだが、残念ながら、そこまでの神曲がなかった(まあ、あれは『奇跡の一曲』だし)。

 

② ダンサンブルだけど、そこまでのダンス能力を要求されない、全く違った路線で攻める。

懐かしい感じがするダンサンブルな曲といえば、荻野目洋子の中期の楽曲テイスト。『Dance Beatは夜明けまで』『湾岸太陽族』のようなアップテンポもいいし、『さよならの果実たち』『北風のキャロル』みたいなのも良かったかも。特に前の2曲はグループでやると、フォーメーションを変化させながら、全体としても見映えする仕上がりが期待できそう。『さよならの果実たち』テイストで、渡辺麻友メインはMVが楽しみだし、どんな振り付けをしてくるのかも期待できるし、この感じは48グループにないから、チャレンジしても良かったと思う。

 

③ あえてキャッチーだけど下世話路線にいく。

連想するのは『ラブマシーン』でブレイクしたときのモー娘。である。『真夏の光線』でのなっちは、まさに正統派アイドルであった。続く『ふるさと』でも、それはアイドルとしての光に満ちていた。でも、大衆化するには弱すぎた。そして、『ラブマシーン』。それまでの品の良い上質なコーラスワークから、一気に下世話な大衆世界に行った。結果、大ブレイク。後に残る大ヒット曲になり認知度も一気に上がった。下世話になったけど、MVのなっちはやっぱり正統派アイドルの輝きを放っている。だから、このテイストを渡辺麻友でやったら、すごいことになったろう(その他の置き換えは、後藤真希に島崎遥香、ラストのキメの矢口真里に高橋みなみ、セクシー担当中澤姐さんに小嶋陽菜、市井紗耶香に柏木由紀、石黒彩に山本彩、冒頭の[ディア~~~~~~」を決める飯田圭織に松井珠理奈、もちろん保田圭には指原莉乃を想定している)。

 

そういう意味で、彼女にとっても彼女を推す制作陣にとっても、グループにおける「正統派アイドル」に縛られて、彼女に冒険させられなかったことは大きな不幸であった。最後の総選挙は立候補制にして、柏木由紀、山本彩などが不出馬となりアイドル票が彼女に集まるようにしても、指原莉乃に勝てなかったのも致し方あるまい。

 AKB48卒業後の神セブンは、前田敦子(もっとも彼女は当初は音楽活動もやっていたが、自然消滅。歌い続けても、20年後に薬師丸ひろ子や原田知世のような活動はできないと諦めたか)、大島優子、渡辺麻友が女優、板野友美、高橋みなみが歌手(どちらもグループ内では良かったけれど、いざグループを離れると歌手活動に行き詰まる。特に高橋みなみは、共演した大物アーティストのバックアップをあれだけ受けて結果を残せなかったのが痛い)、篠田麻里子(ちょっとだけ女優も)、小嶋陽菜がなんとなくタレントということになっているが、子役から芸能界にいて貪欲な大島優子以外は、そこまでの芸能界への執着はないような感じがする。

 AKB48卒業後の渡辺麻友は、女優として決して不合格ではなかった。不合格ではないけれど、美少女から間違いなく美人女優になった渡辺麻友にあてがう役を探すのが、そもそも難しい。大島優子は美人過ぎないから、いろいろな役が受けられるが、渡辺麻友は美人すぎた。

 

けれど、こういう見方もできる。だから、渡辺麻友は最後まで「正統派アイドル」であり続けられた。卒業後の女優活動は、あくまでもアイドルとしてのエピローグであって、全く劣化する姿を見せることなく姿を消すことによって、「正統派アイドル」を全うし、アイドル界の伝説的存在となった。これはこれで幸せな結末なのかもしれない。

 

宇多田ヒカルが「人間活動」のためにアーティスト活動を休止した時期があった。

 

「自分の力で生きたい。いろいろと知らないことがあるまま生活しているので、一人でも生きられるようになりたい」

 

ということを言っていたが、その他、要因の中に、若い頃からずっと第一線で活動し続ける中で、苦しい淋しい生き方をしていたことに気づいて、自分をも他人をも理解するための活動の時間を作るというようなこともあったようだけど、渡辺麻友もたぶんそうであって、芸能界から離れて「人間活動」をして、そして、自分の幸せを見つけて欲しいと願う。

 

しかし、まゆゆ引退のニュースが流れ、48グループや坂道グループの現役卒業メンバーからいろいろコメントがある中で、大物なのに直接のコメントを出さなかったのが、前田敦子、大島優子、指原莉乃。いずれも、渡辺麻友より先に総選挙第一位を取った女王経験者である。同じ景色を見た女王経験者だからこそ、何も言わなくても伝わるということなのか、そこもAKB48の歴代女王として、アイドル伝説らしくていい。

 

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