実家の母は砂糖が大好きで、以前は煮物でも、みりんを使わずに料理酒と砂糖をその分増やしていました。(これは、母の母である祖母が北海道出身の影響もあると思います。北海道の方は、甘いものが大好きな方が多く、トマトにも砂糖、赤飯に甘納豆という感じですから。なので、北海道の方へのお土産は、とらやの羊羹というのが、私の鉄則です。)
実家から離れたことで、徐々に母の食べ物から変わっていくのですが、その一例が「蕎麦とみりん」です。母はうどん派なので、実家ではうどんが多かったのですが、私は蕎麦の方が好きなので(父も蕎麦派)、自分でうどんは、まず食べません。それと、汁も、母が砂糖を使うのに対し、私はだしと醤油とみりんでシンプルに作ります。ということで、砂糖はめったに買うことがありません。最近だと、酢の物や、圧力鍋で魚を煮るのに少し使うくらいです。その分、みりんは大活躍します。
みりんと言っていますが、私が使うのは「本みりん」で、「みりん風調味料」は使いません。煮物で砂糖も少し使いますが、メインはみりん、麺汁もみりん、安い肉で生姜焼を作るときに、どうしても甘味が欲しいとき(高い肉なら肉の旨味だけで十分なので使いません)はみりん、です。みりんの方が確かに高くつくのですが、高い分、余計に使わないようにするというのもメリットかもしれません。
しかし、それだけではないのです。みりんは、砂糖と比べると、実に優秀な調味料なのです。参考までに、砂糖と同じくらいの甘味を出すのに必要なみりんの量ですが、大さじ1杯の砂糖に対してみりんは大さじ1.5杯、重さにすると、砂糖9gに対してみりん27gくらいとなります。
大さじ1杯の砂糖は
エネルギー35kcal
タンパク質0g
脂質0g
炭水化物8.93g
です。
では、比較のために、同じくらいの甘味の大さじ1.5杯のみりんはというと、
エネルギー65kcal
タンパク質0.08g
脂質0g
炭水化物11.66g
です。
あれあれ、むしろカロリーは高くなってしまいます。それなのに、みりんが優秀といえるのは、実はGI値にあります。GI値とは、食後に血糖値を上げるスピードの指標です。つまりGI値が高い食べ物の方が血糖値を急激に上げるということです。この値を比較すると、砂糖109、みりん15。つまり、インスリンの分泌を抑え、太りにくい調味料と言える訳です。ちなみに白米が84、玄米が56であることを考えると、ずいぶん低い数字と言えます。砂糖がほぼショ糖でできていて、ショ糖がブドウ糖1分子に果糖1分子の構成で果糖の比率が高めなのに対し、みりんはブドウ糖の他、多種類の糖を含んでいて、その中には消化分解できないものもあり、比較的果糖が少ないのも、健康にいいと言えます。
私が「みりん風調味料」を使わない理由もお分かりいただけたでしょうか。「みりん風調味料」は糖類に米、米麹、うまみ調味料の混ぜて作っているので、みりんのような低GI値ではないからです。ややこしいことに「みりんタイプ調味料」というものもあります。これは、みりんがアルコール分を含んでいるので、「酒」扱いで酒税がかかるのに対し、「みりんタイプ調味料」はみりんに食塩を入れて飲用できないようにしているので、酒税がかからない分安くなります。ただ、塩味が入っていますから、醤油と合わせるときが難しい。醤油を減らすと、今度は醤油の旨味が足りない感じになります。
ということで、このシリーズの次回は、「醤油」の話です。