画像は『竹取物語絵巻』から。
今夜は中秋の名月ですが、残念ながら関東は雲の向こうの月を想う夜になりそうです。
中秋の名月といえば、『竹取物語』のかぐや姫が月に帰ってしまう、クライマックスシーンの夜ですね。
かぐや姫が月に帰らなければならないことを聞いた翁は「我こそ死なめ」と嘆くのですが、この解釈、「(かぐや姫が月に行ってしまったら)私はきっと死ぬだろう」くらいに訳すのが普通です。「こそ」は協調の係助詞、「め」は推量の助動詞「む」の已然形です。
この「む」ですが、主語が一人称のときは、推量でなく意思の意味になることが多いのです。つまり、「我こそ死なめ」は「私が死のう」。
「月に帰る」ことが「死」の暗喩であるならば、このかぐや姫が、衣をまとい、この世の悩みや苦しみ、悲しみを忘れ、幸せに過ごすということが、悲しみにくれる残された者たちの少しでも救いにつながれば、という作者の思いが込められているように思えます。もちろん、当時の仏教の影響も大きいのでしょうね。